2008/10/10
day28-29 RT66 の終焉
Barstow, CA / Victorville, CA
RT66 の終焉
Barstowのドライブインシアターは、2スクリーンあるものの、ろくに看板も上映案内もない質素な運営で「取りあえずやってます」という感じだった。それぞれのスクリーンでは2本上映されており、僕達はSamuel JacksonのスリラーとKate Hudsonのラブコメという組合せを観た。まぁ大人ひとり$6だから、ただの名画座感覚なら文句はない。
宿は映画に行く前に決めておいた。その名も"Route 66 Motel"、ガイドブックで「安くてキレイ」とオススメの場所。RT66のネオンサインがいかにもで、敷地には壊れたクラシックカー等が並び、雰囲気を醸し出していた。インド人のオーナーが「very clean」と自信満々に案内してくれた部屋は、改装されてクーラーも新調した、との事だった。
二本立を観た後でMotelに戻り、写真の整理とBlogの更新。ベッドが円形で(これが名物らしいが)なんか昭和・日本のラブホテルみたいだな、とか思いつつ「あのドライブイン・シアターでは、愛があまり感じられなかったな」とか「Bagdad Cafeでは一日に何回、あの主題歌を流しているんだろう」とか考えていた。そして、ここのMotelに"RT66"がついてなかったら、果たしてここに泊っただろうか?と。確かに、一見したところ小奇麗な部屋で、虫の知らせだろうか、なんか腑に落ちない気がしていた。
そんな事を考えながらblogを打っていたら、午前2時を過ぎていた。妻はぐっすり寝ている。
寝ている妻の横、僕が眠るハズの所で何かが動いている。枕に虫!ゴキブリのちっちゃいのだな。よく見たらベットのいたる所に何匹もいるじゃないか。深夜になって彼らの活動タイムになったのだ。その古いベットからどんどん這い出てきているのだ。ティッシュで殺していったら、あっという間に十匹以上になった。熟睡中の妻を起こす。自分がそこで寝てたらと思うとゾツとしつつ、薄着だった妻を不憫に思った。今度は飛び起きた妻が言った「赤いのも動いてる!」。それはシーツの真ん中を闊歩している赤いダニだった。僕達は部屋を出る事にした。
無反応だったオフィスから、出発直前にようやくオーナーの妻が出てきて言った。簡単に苦情を言うと、こう応えた。「部屋はvery clean」。 じゃぁ見てみなよ。あのゴキブリだらけのベットを!「今は見ない。出ていくなら、勝手にどうぞ。で、鍵はちゃんと返してね」。
まぁ、very cleanの定義ってのは人によって違うのだろう。たまたま虫が多い時期だったか?それとも、虫が活動する深夜まで起きてて、見てしまった俺が悪いのか?知らずに寝てれば平和だったのだろうか?
「安かろう悪かろう」だ、虫だって出るだろう。ニューメキシコのmotelで、部屋に入り込んだ鈴虫の鳴き声で眠れなかったのを思い出したが、いやいや、そんな次元ではない。ゴキブリが床を歩いてるならまだしも、ベットの中でどんどんわいて出てくるのは、たまらん。虫だけが原因じゃない、洗面所がカビだらけだったり、気になって我慢してた部分は他にもあったところに、虫で大きくトドメを刺されたのだ。
僕はドライブインシアターやRoute 66というギミックに「釣られて来る」モノズキな客だ。ただ安い宿を探していたのではない。ノスタルジアと不衛生は違うのだ。そんな旅の中で、Munger Moss Motelや、Tulsaのドライブインシアター、Tucumcariのアンティーク屋のお婆さん・・・出会えた事が嬉しかった人達が沢山居たが、既に懐かしい存在になりつつある。
既に気付いていた。あんな素晴らしい人達が居る一方で、RT66の歴史やブランドにぶら下がっていれば客が寄ってくるから商売してる人が居る事を。これまでもRT66沿いには"Route 66"の名のついたMotelは無数にあった。そのうち2ヶ所で、泊ろうして部屋を見せてもらいながらも、汚そうで止めていた経緯があった。そう言えばあの時も「very clean」とフロントで言われたっけ。
なぜ今夜はまんまと釣られたのだろう。ガイドブックで薦めてたからか?ネオンサインやクラシックカーに引かれたからか(先代のオーナーが集めたのを引き継いだだけだろうけど)?値段だって、街の安motelのレベルから言えば割高だった。
今夜はとても裏切られた気がして、I-40を西に走った。この深夜になって、どうするのが良策なのかは分からなかったが、とりあえず、ただ走った。Old Route 66ではなく、普通の高速道路を。
僕らのRT66 の旅は終りを迎えた瞬間だった。失恋した時みたいな気分だった。
少し先のVictorvilleという街まで行くのが限界だった。一日中ドライブして、二本立ての映画を見た後の午前4時半。ホテル難民になりつつも、辿り着いたのは、Hilton Garden Inn。 $80でチェックアウトは午後3時(今からでも十分睡眠が取れる!)。Hilton系の会員だったので、部屋はJunior Suiteにアップグレードしました、と言われた。広い部屋に、無駄にでかいプラズマ・テレビが2台、リビングとベットルームにそれぞれあった。
そして清潔さで言えば、これこそが、僕らの感覚で言う「very clean」だった。